2018/11/11 乳牛における排卵卵胞の発育時のP4濃度が流産のタイミングに及ぼす影響についての論文を読んでみた


乳牛における排卵卵胞の発育時のP4濃度が流産のタイミングに及ぼす影響についての論文(10.3168/jds.2018-14410)を読んでみた。

  • 【背景】
    排卵卵胞の発育時にP4を投与すると、黄体形成がなかった乳牛で投与しなかったものに比べて受胎性が向上していたとするメタアナリシスがある。また逆に、排卵卵胞の発育時にP4が低いと、AI後29-60日の間に流産するリスクが上昇するという報告もある。排卵卵胞の発育時の低P4濃度は、早期胚死滅を増加させる重要な因子になっている可能性がある。
  • 【目的】
    排卵卵胞の発育時のP4濃度の高低が、搾乳牛の卵胞波と受胎性に及ぼす影響を調べる
  • 【材料と方法】
    一日3回搾乳で、 平均乳量42kg/dayの搾乳 牛558頭を、排卵卵胞の発育時のP4値が異なるように操作して、high/high (H/H), high/low (H/L), low/high (L/H), low/low (L/L)の4群に分け、AIした。H/Hではオブシンクプログラムのday8に新品CIDR、day11にさらに新品CIDRに取り換えた。H/Lはday8に新品CIDR、day11に使用済みCIDRに取り換え、day 11と12にPGF2αを投与した。L/Hはday7にPGF2αを投与し、day 9に使用済みCIDR、day11にさらに新品CIDR2本に取り換えた。L/Lはday7にPGF2αを投与し、day 9に使用済みCIDR、day11に使用済みCIDRに取り換え、day 11と12にPGF2αを投与した。

    採血は継時的に行い、P4濃度と、妊娠特異的タンパクである、pregnancy-specific protein B (PSPB)濃度を測定した。

    妊娠診断は、AI後23と28ではPSPBの結果、35日以降はエコーの結果を使用した。

    排卵卵胞のサイズ、2個排卵、受胎率、胚死滅率を調査した。

  • 【結果】
    ①L/L群が卵胞サイズが有意に大きくなった(1個排卵時で19.6 mm vs. H/H, 16.8 mm、図2)。②L/L群が有意に2個排卵率が高かった(49% vs. H/H, 12%、図3A)。③Day23受胎率はL/L群が有意に高かった(H/H, 48.1% vs. H/L, 59.0% vs. L/H, 59.7% vs. L/L, 66.4%)。しかし、L/L群はday 35から56に有意に高い胚死滅率を示し、最終的に分娩できた割合に有意差は無かった(H/H, 34.4% vs. H/L, 42.7% vs. L/H, 44.3% vs. L/L, 43.2%、表2)。④片側双子では両側双子や単子よりday 35から56に有意に高い胚死滅率だった。一個排卵の牛だけでも、卵胞発育時のP4濃度が低いと、卵胞発育時のP4濃度が高いものに比べday 35から56に有意に高い胚死滅率を示した。
  • 【まとめ】
    排卵卵胞の発育時のP4濃度の高低は、排卵卵胞の個数と胚死滅のタイミングを左右している。
  • 【感想】
    牛群の泌乳レベルが高いな。日本の牛群が高泌乳なんて言えなくなってしまいそう。それにしても、群分けの処置が凄いなぁ。CIDR入れていれば、生体内の黄体がPGで完全に退行しても発情が来ないし、受胎に影響ないのか。分娩後のP4濃度の低い黄体形成不全の牛にショートシンクやPGで発情誘起してAIしたら、L/L群のように双子リスクが上がるのかも。
  • Bibliography

    No tags for this post.

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

    *