2018/12/19 ウシの精子に対する浸透圧の影響を調査の一つとして調べた論文を読んでみた


2018/12/18 引き続き牛の精子に対する尿の影響を調べている。とうとうウシの精子に対する浸透圧の影響を調査の一つとして調べた論文(10.1095/biolreprod67.6.1811)を読んでみた。


  • 【目的】
    ウシ精子の浸透圧に対する特性を明らかにすること。
    This study was conducted to determine the osmotic properties of bull spermatozoa, including the effects of osmotic stress and cryoprotectant agent (CPA) addition and removal, on sperm motility
  • 【材料と方法】
    精子はTL-Hepesで希釈し、様々な浸透圧の希釈液に暴露して精子の容積や運動性を測定。
    Semen from beef bulls was collected by electroejaculation and extended 1:3 in TL-Hepes containing 100 ug/ml pyruvate and 6 mg/ml BSA.
  • 【結果】
    35~2400 mOsmに暴露した結果、90%以上の運動性は270~360 mOsmの範囲に限られていた(図2)。
    In solutions of 150–1200 mOsmolal (mOsm), bull spermatozoa behaved as linear osmometers (r2 = 0.97) with an osmotically inactive cell volume of 61%. The is- osmotic cell volume was 23.5 um3. Motility was determined after exposure to anisosmotic solutions ranging from 35 to 2400 mOsm and after return to isosmotic conditions. Retention of at least 90% of isosmotic motility could be maintained only between 270–360 mOsm. Bull spermatozoa were calculated to retain 90% of their isosmotic motility at 92–103% of their isosmotic cell volume. Motility following a one-step addition and removal of 1 M glycerol, dimethyl sulfoxide, and ethylene glycol was reduced by 31%, 90%, and 6%, respectively, compared with CPA addition only.
  • 【結論】
    ウシ精子の凍結保存において、浸透圧は限られた範囲内になるようにすべきで、そのためにはエチレングリコールの使用が凍害保護剤として有用かもしれない。
    These data indicate that, during bull spermatozoa cryopreservation, osmotically driven cell volume excursions must be limited by exposure to a very narrow range that may be facilitated by the use of ethylene glycol as a CPA.

  • 浸透圧に対する精子の運動性が見事に現されていた。ウシでも、低張や高張の環境下では運動性が著しく抑制されるようだ。

    ウシの尿の浸透圧はまだ調べられていないが、ほかの動物種では著しく高い傾向にあるので、尿の混入により高張になるとほぼ言えるだろう。

    Bibliography

    2018/12/18 pHと浸透圧の変化と尿の混入が馬の精子に与える影響を調べた論文を読んでみた


    2018/12/18 引き続き牛の精子に対する尿の影響を調べている。とうとう馬の精子に対する尿の影響を調べた論文(10.1016/S0093-691X(01)00593-3)を読んでみた。


  • 【背景】
    尿の精液への混入は様々な動物種で不受胎の原因になっている。悪影響の一因としてpHと浸透圧の変化が報告されている。
  • 【目的】
    pHと浸透圧の変化、そして尿がウマの精子の運動性に与える影響を調べる。
  • 【材料と方法】
    pH, 浸透圧を変化させて(実験1, 2)、また尿を混ぜて(実験3)、精子の運動性を評価した。さらに、尿と精液の混ぜたものに、増量剤を添加や遠心を行い、精子の運動性を評価した。
    Semen was collected and subjected to conditions of varying pH (Experiment 1), of varying osmolarity (Experiment 2), and various quantities and concentrations of urine (Experiment 3) and effects on motility were recorded. Finally, semen was contaminated with urine and then either of 2 semen extenders was added, with or without centrifugation, in an attempt to alleviate the detrimental effect of urine on motility (Experiment 4).
  • 【結果】
    pHと浸透圧の変化は精子の運動性を低下させた(図1, 2)。
    The results of these experiments showed that alterations in pH and osmolarity negatively affected stallion sperm motility. Optimal pH and osmolarity appeared to be approximately 7.7 and 315, respectively.

    また、尿の混入による精子の運動性は有意に低下した(表1)。
    Contamination of the ejaculate with urine significantly decreased sperm motility. Smaller quantities of dilute urine were less detrimental than larger quantities of dilute urine, and dilute urine was less detrimental than more concentrated urine.

    精液増量剤の添加により、尿の混入によって低下した精子の運動性はコントロールと同等になった(表2)。
    The addition of semen extender restored the motility of urine contaminated semen to that of the uncontaminated control, however centrifugation to remove urine provided no significant advantage.


  • 人の結果と同様に、pH, 浸透圧の変化、尿の混入が精子の運動性に悪影響を及ぼしていることが示されていた。

    面白いことに、尿の混在が見られる種牡馬と交配するときは、この精液増量剤を子宮内に注入するというアイデアまで考察に書かれていた。これはウシにも応用できるだろう。

    次はウシの精子に及ぼす影響についての論文を読むぞ!

    Bibliography

    2018/12/16 ボンゴの精子に対する尿の影響を調べた短報を読んでみた


    牛の精子では尿にどのくらい毒性があるのかと思っているのだが、シカの仲間であるボンゴの精子への影響を調べた短報(10.1016/j.anireprosci.2007.06.016)を発見。コレを読んでみた。


  • 【背景】
    希少な動物であるボンゴの精子をマッサージと電気射精で採取していたとき、尿で汚染されてしまった(1 : 3.7)。
  • 【目的】
    汚染された精子のレスキューを試みた。
  • 【材料と方法】
    汚染1.5時間後から、遠心や等張の緩衝液で洗って、精子の運動性や膜の損傷を評価。また、pHやモル浸透圧濃度を適宜測定。
  • 【結果】
    汚染された精子の運動性は0%だったが、洗浄後は最大50%まで復活した(膜の正常率は最大71%)。凍結後、再融解しても運動性は35%だった(膜の正常率は70%)。
    At 1.5 h post-collection, progressive motility was 0% but some spermatozoa had intermittently twitching tails. Subsequent dilution with media and processing improved the progressive motility (up to 50%) and intact membranes (up to 71%) of spermatozoa. After thawing, the respective values were 35 and 70%. The osmolarity and pH of the contaminated supernatant was 151mOsm and 7.45, respectively. Initial progressive motility in a non-contaminated portion of semen collected during the same procedure was 80%, and, after thawing, 60 and 90%, of the spermato- zoa showed progressive motility and intact membranes, respectively.
  • 【結論】
    ボンゴ精液の尿汚染は、等浸透圧の溶液で薄めた後から、運動性を回復し、凍結保存可能だった。

  • 牛もシカの仲間だからある程度は同様のことが言えるだろう。それにして、精子の活性は環境要因によって大きく異なるようだ。尿の成分による直接的な影響よりも、浸透圧が精子の活性を左右するみたい。

    参考文献にようやく牛の精子と浸透圧の関係について調べた文献(10.1095/biolreprod67.6.1811)を発見!

    Bibliography

    2018/12/15 健康な男性における射精後の尿中精子の生存性を調べた論文を読んでみた


    ヒトの尿では精子にどのくらい毒性があるのかと思い、論文を調べていたら法医学の学術誌に行き着いた。健康な男性における射精後の尿中精子の生存性を調べた論文(10.1016/j.forsciint.2009.10.002)を読んでみた。


  • 【背景】
    尿中に精子が混入することがあるのは人でも動物でも認められている(射精後の尿や逆行性射精)。しかし、射精後の尿中で精子がどのくらいの長さ生存しているかは知られていない。
  • 【目的】
    射精後の排尿から生存精子がどのくらいまで分離できるかを調べること。
  • 【材料と方法】
    健康な若い男性10名の射精前の尿、射精後の尿、精子を採取した。射精後の排尿までの時間は30分から11時間後までの幅があった。尿中の精子は生存し運動性があるかを調べた。
  • 【結果】
    全員、射精前尿中に精子は認められなかったが、射精後尿中に精子が認められた。最長で4.5時間後の排尿まで生存精子が認められた(表1)。
    The results showed that none of the 10 participants had sperm in their urine samples prior to ejaculation. The average sperm concentration was 50.1 million/ml. After a time span of 30 min 59.5% of the first fractions of post-ejaculatory urine samples were sperm positive, after 2 and 4 h still 70%, and after 5 h sperm were no longer detected. The last motile spermatozoa could be found after 4.5 h.
  • 【考察】
    尿道に残された精子は多くの男性で初回排尿で洗い流されるようだが、射精後5時間後以降も生存精子が見られるかはさらなる調査が必要。

  • 緒言に実際の法医学上問題となった事件が書かれており、非常に生々しい研究の動機で衝撃的だった。

    それはともかく、射精後の尿中で、さらに採取から2時間以内の検査なのに精子に活力があったのは衝撃的。ずっと尿に精子がいたのではなく、尿道に残された精子が尿と一緒に排出されているのであろう。

    尿の精子への影響は致死的だと報告されているらしい(10.1016/S0015-0282(16)57990-4)ので、そちらの論文も読む必要があるな。

    Bibliography

    2018/12/13 乳牛の尿腟への対処法として人工授精前のオゾン洗浄の効果を検討した論文を読んでみた


    尿腟の牛の受胎率があまり良くないっていうのは現場の感覚として持っている人は多い。しかし、論文でそれが証明されだしたのは結構最近だったりする。腟検査も嫌厭されがちなので、研究している人も少なく論文が少ない。さらに、その対処法となると手術法の検討がほとんど。前から気になっていた、牛の尿腟への対処法として人工授精前のオゾン洗浄の効果を検討した論文(10.1111/j.1439-0531.2011.01857.x)を読んでみた。


  • 【背景】
    尿腟は乳牛の受胎性を大きく下げる要因担っている。これまでに対処法は手術が報告されているが、経済的でなく、欠点も多い。
  • 【目的】
    実践的で、侵襲性が少ない尿腟の対処法を模索すること。
  • 【材料と方法】
    軽度、中度、重度の尿腟と診断した乳牛1219頭を治療法によって3群に分けた。生理食塩水による子宮と腟洗浄(group A, n = 400)、streptomycinの抗生物質による子宮と腟洗浄(group B, n = 400)、そして、オゾン水による子宮と腟洗浄(group C, n = 419)。処置は尿を除去した後に行い、処置後は排卵剤を投与してAIを実施した。
  • 【結果】
    オゾン水を使用したGroup Cが最も良い成績だった(平均受精回数、空胎日数、淘汰率)。
    The ozone treat- ment was found to be the most effective treatment modality, resulting in the shortest period of days open (95, 89 and 79 days in groups A, B and C, respectively; p < 0.05), the fewest number of inseminations until pregnancy (2.38, 1.84 and 1.63 in groups A, B and C, respectively; p < 0.05) and the smallest number of culled cows (20, 23 and 12 in groups A, B and C, respectively; p < 0.05)
  • 【結論】
    オゾン水による洗浄は尿腟の乳牛の繁殖性を改善する有効な治療法だ。

  • 尿腟の悪影響は、子宮内膜炎と精子への影響が分かっているけど、子宮内膜炎の影響のほうが強そう。発情期に尿の逆流がきっとあるのだろうなぁ。難しいのは、洗うだけでは不十分っぽいところ。オゾン水には迅速な抗菌作用に加え、局所免疫も刺激するらしいのでそこが良かったのかもと触れている。

    でも手法を見ているとオゾン水洗浄もそれなりの労力がかかる。手術での根治を目指すか、悩ましいような気もした。

    ただ単にAI時に尿へシース管が触れなければ良いかなぁっていう考えでは効果が薄いことはよくよく分かった。

    Bibliography