2023/10/17 皮下グルコースで牛の分娩を予測する話


最近に読んだ牛の論文から今日は以下を紹介します。


Calving prediction with continuous measurement of subcutaneous tissue glucose concentration in pregnant cows
(36940636)

この研究は、妊娠牛の出産予測において皮下組織のグルコース濃度を連続測定するデバイスを牛で試した。通常、出産の前に血糖濃度が増加することが知られているが、血液採取はストレスを牛に与えるため、この方法が実際には困難。そこで、この研究ではウェアラブルセンサーを使用して皮下組織のグルコース濃度(tGLU)を測定し、その変動を通じて出産を予測しようとした。

研究の要点は以下のとおり。

  • 連続測定: ウェアラブルセンサーを使用して15分ごとにtGLUを連続測定した。これにより、血液採取によるストレスを避けつつ、グルコース濃度の変動を確認できた。
  • 出産前後のtGLUの変動: 分娩の約2.8時間前から3.5時間後までの間に、tGLUが一時的に増加。この変動は分娩の指標になり得る。
  • 個体差と初産牛と経産牛の違い: 個体ごとの基本的なtGLUにはバリエーションがあり、初産牛は経産牛よりもtGLUが高かった。これは従来のGLUの報告通り。
  • 出産予測: tGLUの3時間移動平均の最大相対増加量を使用して出産を予測した。ROC分析により、24時間、18時間、12時間、および6時間以内の出産を予測するためのカットオフポイントを設定。
  • 予測性能: 出産予測のためのtGLUカットオフポイントに到達した時点と実際の出産との間の時間間隔は平均で12.3 ± 5.6時間でした。ほとんどの牛が少なくとも2つのカットオフポイントに到達し、分娩が満足のいく予測が得られた。
  • 技術の向上: 今後、機械学習ベースの予測アルゴリズムや牛に最適化されたセンサーの進歩が、tGLUを使用した出産予測の精度を向上させる可能性がある。

  • この研究により、ウェアラブルセンサーによる皮下組織のグルコース濃度が牛の分娩予測において有用な指標となる可能性が示された。分娩予測のウェアラブルデバイスはかなり出揃った感がある。次は普及の段階だろう。うまく助成金などを用いてこれらのデバイスを取り入れ、分娩事故低減や労働時間軽減に取り組んで欲しい。

    Bibliography

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