鏡の向こうの休日


<創作> 鴨川市、6月27日、とある新婚夫婦の休日
県民の森


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 今日もくたくたになって夫は帰ってきた。しかし、明日は休日。心なしか足取りは軽い。もちろん、愛妻が料理を作って待っているので、普段から軽いのだが。
 愛妻は今日もいつものように仕事の疲れを癒してくれる。美味しい食事。暖かいお風呂。楽しい会話。なのに、日頃の感謝は仕事仕事の日々で全く返せていない。
 夫は突如思い立って、愛妻を誘って出かけることにした。こんな夜から、と難色を示す愛妻をなんとか説得し、二人はブルーの新車に乗って内浦県民の森へと向かった。
 着くとすでに12時を回っている。しかし、眠ってしまうにはもったいない。まだまだ大丈夫なはずだが…。眠たげに目をこする愛妻を夜の散歩へと誘い出す。不審の視線を背中に感じつつ、夜の暗い林道を進む。
 目的のモノは仄かに光った。パッパと光が点滅する。思いがけない光景に思わず二人から感嘆の声が出た。ヒメホタル、陸生の蛍で、6月下旬から7月上旬のごく短い間だけ発光する。先ほどまで険しい表情から一転、ニコニコ顔の愛妻に戻った。これが見れただけでも着た甲斐があったと夫は思う。
 翌朝、鳥の鳴き声で目覚める。しかし、思ってたいたよりは鳥影は多くない。梅雨に突入し、子育て真っ最中の鳥たちは子育てで忙しいのかもしれない。幸い、今日は気持ちの良い青空が広がっている。県民の森のハイキングコースを散策すると、森の空気がすがすがしい。近くにオオルリの声も姿は見えない。ヒ・フ・ミー、ホイホイホイ。遠くのサンコウチョウの声が実に嬉しい。エナガ・センダイムシクイの混群にはまだモコモコのエナガの幼鳥が混ざっている。2時間強気持ちよい汗を流し、早々に下山することにした。
 向かった先は今話題の「かんぽの宿」鴨川館。日帰り入浴で入館した。まずは昼食とビールで乾杯をする。乾いた喉にビールが染み渡り、実にうまい。食後は7階の大浴場でゆったりと入浴。海のすぐそばなので、大海原が爽快だ。しかし、ここからはそれだけでなくあるものが見れる。このかんぽの宿の隣には鴨川シーワールドがある。そう、かなり小さいがシャチのショーが垣間見れるのだ。大海を目前にしていると水族館の狭さが際立ち、少しシャチが哀れな気もするが、見事なショーを披露した。
 お買い物をしてから帰宅。充実した大満足の夫と愛妻であった。少しは恩返しができたかな。
おわり
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もちろん、これは実現可能な、妄想。創作です。実際は一人で行ったし、知らなかったからヒメホタルも見なかったんですけどね…。

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「鏡の向こうの休日」への2件のフィードバック

  1. 内浦山ではアオバトの声は聴かれませんでしたか?
    私は快晴の27日朝、鴨川のH海岸のS島の崖でクロサギが繁殖行動(その結果も)を見ようと出かけてきました。なにやら妖しい雰囲気の中、枯れ枝をくわえてうろうろしているのも交えて5羽ほどの行動を見てきました。
    ヒメじゃないホタルですがうちの近くでも見られます。
    近くの人がウグイスの巣に時鳥の雛がどっかと溢れんばかりに座り込んでいたのを見ました。私も見たかったのですが、巣立ちしてしまったようで残念。

  2.  ヒメホタルのリベンジを6月末にしてきましたよ。危うく返り討ちに遭うところでしたが、なんとか見ることができました。仄かな光が美しかったです。
     残念ながら、アオバトの声は両日とも聞いていません。あれは、いれば分かりますからねぇ。
     僕もクロサギを見てきましたよ。ヒナがかなり大きくなっていて、モコモコのぬいぐるみがひょこひょこ歩いていて可愛かったです。

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