2018/8/25-9/15 学会等のイベントが終了!



8/25に、農場どないすんねん研究会の年次大会で、自分の研究をアクティブラーニング手法で学ぶ試みを発表!


8/31に、念願の世界牛病学会でポスター発表!

9/5に、論文のアクセプトの連絡が来た!憧れの雑誌だったので、嬉しすぎる。


9/9に、関東・東京合同地区獣医師大会・学会にて口頭発表し、学術奨励賞を受賞!

9/12に、不本意ながらメディアの取材に対応した。


9/13に、日本繁殖生物学会にて口頭発表!産業動物獣医師の仲間がほぼ皆無な中、暖かく声をかけてもらいました。

これで少し落ち着きました。ようやく次の論文執筆に着手できる!

2018/8/27 蹄底潰瘍が原因?


肢を痛がると診療依頼があった。両後肢を痛がるが、重篤そうな右後肢を診ることにした。

写真1 削蹄前の患肢の蹄底

写真2 削蹄後の患肢の蹄底

内底が蹄尖まで遊離しており、広く蹄底を剥離した。外蹄にブロックを装着して治療完了した。外蹄にも内底にも蹄底潰瘍の病変を認めたので、それが原因の可能性がある。

2018/8/21 軸側溝の趾皮膚炎


削蹄師と獣医師が交互に見ても分からなかった跛行が、悪くなる一方だと診療依頼があった。ほぼ三本の肢で歩行している。

Fig. 1. Left hind hoof of the patient before treatment.

Fig. 2. Extrusion of pus from the inside of the hoof.

Fig. 3. Dermatitis found in the inside of the hoof.

軸側溝に沿って趾皮膚炎の病変を認めた。これはなかなか見つからないし、痛い訳だ。

2018/8/23-26 飼料が乳牛の繁殖性に及ぼす影響をメタアナリシスで調べた論文を読んでみた。


飼料が乳牛の繁殖性に及ぼす影響をメタアナリシスで調べた論文(10.3168/jds.2017-14064)を読んでみた。

  • 【背景】
  • 移行期の栄養状態は受胎性に影響することはよく分かっている。交絡要因を省くためにメタアナリシスを用いた研究は、脂肪の添加、ミネラル、タンパクの点において報告がある。炭水化物の点から影響を評価したメタアナリシスの研究はこれまでにない。

  • 【目的】
  • 乳牛の移行期の飼料が受胎性に及ぼす影響を明らかにすること。

  • 【材料方法】
  • (複雑かつ専門外のため省略)

  • 【結果】
  • 39の論文が選択され、メタアナリシスを行った。受胎率に影響を及ぼす多変量のモデルを構築したところ、脂肪酸摂取量、デンプン摂取量、代謝エネルギーバランス、小腸でのC14:0利用率において正の関係が、急速醗酵する糖類、飼料中の糖類の比率、乳中タンパク量において負の関係が認められた(表4)。妊娠までの日数に影響を及ぼすものとして、スレオニンとリジンの量が日数の延長と関係が認められた。

  • 【結論】
  • 移行期の飼料は受胎性に明らかに影響を及ぼしている。特に、飼料中の脂肪、エネルギーとタンパクの増強を泌乳初期に行うことが高受胎性に寄与している。

  • 【感想】
  • 飼料計算にはCPM-Dairyを使用していた。購入するには700$かぁ。産業動物の仕事は飼料計算からは逃げられないなぁ。ところで、メタアナリシスの解析方法はこの論文くらいしっかり書かないと再現性がないよなぁ。

    Bibliography

  • 2018/7/21 暑熱ストレスがin vitro受精に及ぼす影響についての論文を読んでみた


    暑熱ストレスがin vitro受精に及ぼす影響についての論文(10.1002/mrd.22441)を読んでみた。

  • 【背景】暑熱ストレスは受精に悪影響を及ぼしている。
  • 【目的】卵子と精子が暑熱ストレス下においてどのように受精が阻害されるかを、酸化ストレスと多精受精の点から調べること。
  • 【材料と方法】①卵子(屠場で採取、牛の品種は様々)を38.5℃, 40.0℃, 41.0℃で6時間、精子とin vitro受精、②精子を38.5℃, 41.0℃で4時間暴露した後に、卵子と38.5℃で6時間、精子とin vitro受精。受精と受精卵の発育、酸化ストレス、HSPA1A(暑熱ストレス指標)とUCHL1(多精受精防止の指標)の遺伝子発現を調べた。
  • 【結果】①受精時の温度が上がると、day2 の卵割率(38.5℃で84.5% vs 41.0℃で39.9%)、day8の胚盤胞発生率(38.5℃で49.7% vs 41.0℃で3.2%)が有意に低下(Table 2)。②受精時の温度が上がると、多精受精(38.5℃で19.8% vs 41.0℃で39.4%)が上昇していた(Table 1, P=0.058)。③精子を高温に暴露すると、day2の卵割率、day8の胚盤胞発生率は減少していたが有意差はなかった(Table 3)。④40.0℃の中程度の暑熱ストレスでも同様の傾向で、day2 の卵割率(38.5℃で78.3% vs 40.0℃で69.8%)、day8の胚盤胞発生率(38.5℃で33.5% vs 40.0℃で19.2%)が有意に低下(Table 6)。⑤暑熱ストレスに暴露すると、酸化ストレスは上昇し、HSPA1A(暑熱ストレス指標)の発現は上昇、UCHL1(多精受精防止の指標)の発現は減少していた(Figure 4, 5)。
  • 【結論】暑熱ストレスに暴露されたことによる多精受精の上昇が胚盤胞発生率を下げる一つの要因になっている。
  • 【感想】この実験では暑熱ストレスへの暴露は限定的で、最大6時間。それでも、41.0℃に暴露されるとこんなにも胚盤胞発生率が落ちるとは驚き。

    実際の真夏の牛における連日の暑熱ストレスのことを考えると、もっと悪影響の度合いは大きいのだろう。直腸温度より腟温度の方が高いという論文(10.3168/jds.2017-13799)を踏まえ、平熱を39.0℃と仮定した場合、直腸温で39.5℃の牛は腟温度(生殖器の温度)は39.9℃に、直腸温で40.0℃の牛は腟温度は40.8℃に、直腸温で40.5℃の牛は腟温度は41.7℃になっている可能性がある。これら2つの論文を考慮すると、午後の直腸温で40.0℃を超える牛には人工授精を控え、受精卵移植を推奨した方が良いのだろう。

    この夏は全頭直腸温度を測り、これを実践してみよう。

  • Bibliography