乳牛における5-day CIDR-Cosynchプログラムにおける初回のGnRHの必要性を調査した論文(10.3168/jds.2017-13491)を読んでみた。
【背景】定時授精における初回の卵胞の排卵の有無は受胎率に影響する。しかし、5-day CIDR-Cosynchプログラムにおける初回のGnRHで、35%の経産牛しか排卵しなかったという報告が有り、初回のGnRH投与の必要性は疑わしい。
【目的】5-day CIDR-Cosynchプログラムにおける初回のGnRHの有無による受胎率への影響を調査すること
【材料と方法】5000頭を飼養する一酪農場、分娩後50日のVWPを置いたのち、Presynch-Cosynchを実施してAI(受胎率26%)した。妊娠鑑定後、不受胎だったもののうちの429頭を調査。5-day CIDR-Cosynchプログラムでは、GnRH + CIDR on day 0, CIDR removal and PGF2a on day5で、heat detection and AI on day 6 and 7。残りheatが分からなかった牛はGnRH on day 7, AI on day 8。Day 0におけるGnRHの有無をランダムに打ち、受胎率を調査した。
【結果】GnRH無し群(n = 203, P/AI = 27%)の方がGnRH有り群(n = 203, P/AI = 21%)の方が有意差は無いものの受胎率は高かった(P = 0.54)。P4値の高いものと低いもの中でも、GnRH無し群とGnRH有り群の受胎率に差はなかった。
【考察】処置開始時に、GnRHに反応する主席卵胞のない牛や、P4濃度が3 ng/ML以上の牛(GnRHへの反応性が乏しい)が多く含まれている可能性がある。
【結論】乳牛における5-day CIDR-Cosynchプログラムにおける初回のGnRHに受胎率を向上させる効果はなかった。初回のGnRH省くことで、経費の削減になる。
【感想】アメリカでは5-day CIDR-Cosynchプログラムが主流なのかなぁ?受胎性が変わらないのなら、1週間でAIできるのは確かに魅力的。
それにしても、独創的な発想や特殊な機材がなくても、しっかりとした疑問を設定し適切な手法を使えばJDSに掲載してもらえるんだな。素晴らしい。
Bibliography