仕事柄、酪農場の繁殖成績について言及することが多いです。代表的な指標と、時間差や特徴についてごくごく簡単に説明し、オススメの繁殖成績指標をご自身でモニタリングする方法を説明します。
まず、分娩間隔です。これは最終分娩日から前回分娩日を引き算した値で、分娩の間隔を表します。分娩日は単純で記録が取りやすいため、牛群の分娩間隔を平均化した平均分娩間隔は農林水産省のデータにも頻繁に登場します。しかし、分娩が2回成立するまで数値が出ないこと、また各種流産などの影響も含まれてしまいます。農場の繁殖成績指標としては、変動が小さく、数値の変化として表れてくるのに約一年かかるため、時間差がかなりあります。
もっと時間差の小さい繁殖指標として、空胎日数が登場しました。これは、最終発情日から最終分娩日を引き算した値です。牛群の空胎日数を平均化した平均空胎日数は学術研究にも利用されており、王道の繁殖成績指標と言えます。妊娠中期以降の流産の影響も除外されています。しかし、それでも妊娠が確定するまで数値が出ないなど、時間差はまだ長いと言えます。
この平均空胎日数を利用して、さらに時間差を小さくしたものがJMRと言えます。これは、最終発情日から最終分娩日を引き算し、さらに生理的空胎日数(通常は60日)を引いた値です。「牛の子宮が妊娠可能になった時点から、どの程度日数が経っているのか」を数値として評価している言えます。非妊娠牛のJMRの数値も算出することで、即時反応性がさらに高まりました。このJMRを指標として用いている酪農家も多いですが、これらの値を算出してくれるような表計算ソフトが必要となります。牛群の評価として使う場合は、JMRを平均します。そのため、長期非妊娠牛が淘汰されるだけで、大きく数値が変動してしまうことも少なくないので、数値の変動の解釈は慎重にする必要があります。また、利用者の多くなってきたFarmnoteやU-motionでも基本画面から利用できません。
時間差が小さく、信頼性の高い繁殖成績指標は何なのか?そこで近年注目されているのが、発情発見率および妊娠率です。分娩後に生理的空胎日数(通常は60日)を経過した牛について,そこから現在または受胎するまでの発情周期 (21日)の回数をカウントし,授精(またはET)機会数で割り算した値です。こうすることで、21日毎の繁殖成績指標が算出できます。FarmnoteやU-motionでも基本画面から見られるよう採用されており、クリック一つですぐに確認できます。21日毎に、非妊娠牛に対してどのくらいの割合で交配ができているのかを示しているため、直感的な理解が容易なのが実感できます。
画面では発情発見率のみならず、妊娠数で割り算した妊娠率も併記されています。なお、妊娠率を発情発見率で割り算することで、受胎率も求められます。21日毎に、非妊娠牛に対してどのくらいの割合で妊娠が成立しているのかを示しています。この妊娠率を把握する事で、目標とする分娩間隔になるよう牛群をコントロールすることが可能になることが研究で示されています。コントロールの方法は、分娩後の繁殖供与日数を増減させます。
ですので、牛群管理で何か変更があった場合に、それを評価する時間差が少ない指標として21日毎の発情発見率、妊娠率、受胎率をモニタリングすることを強くお勧めします。FarmnoteやU-motionなどの繁殖管理ソフトウェアを導入されていなくても、月毎に交配済みの経産牛頭数や妊娠頭数を数え、非妊娠の経産牛頭数で割る事で、月毎の発情発見率、妊娠率をモニタリングすることは可能です。また、妊娠頭数を交配済みの経産牛頭数で割り算する事で月毎の受胎率の傾向は分かります。月毎に数えるのが大変だというのであれば、繁殖検診時などに、パッと計算しておくと良いでしょう。
Farmnoteの画面を以下に示しました。左下のレポート一覧にある「妊娠率と発情発見率」をクリックすることで見ることができます。
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