2020/4/29 COVID-19と家畜の論文を読んでみた⑥


2020/4/17にTransboundary and Emerging Diseasesへ掲載されたSARS-CoV-2の中間宿主についての短報”Serological survey of SARS‐CoV‐2 for experimental, domestic, companion and wild animals excludes intermediate hosts of 35 different species of animals”(10.1111/tbed.13577)を読んでみた。以下に要点を抜粋します。


・SARS-CoV-2の自然宿主はコウモリだと考えられているが、未だ中間宿主は不明。
・多種の動物の血清にSARS-CoV-2の抗体が含まれているのかをELISAのキットを作成して調査した。
・家畜(豚、牛、羊、馬)、家禽、実験動物、伴侶動物(487頭の犬、66頭の飼い猫と21頭の野良猫)、22種の野生動物(17頭のセンザンコウ、10頭のハクビシン、31頭のラクダを含む)の検体からSARS-CoV-2の抗体は見つからなかった。



つまり、調査した検体からは抗体が検出されず、中間宿主は推察できなかったってことだ。センザンコウからSARS-CoV-2に近いウイルスが分離されているものの、分離されたコロナウイルスにはSARS-CoV-2に特異的なRRAR motifを持っていなかったこと(10.1002/jmv.25731)、今回調べた血清には抗体が見られなかったことから、中間宿主と断定するには疑わしいようだ。

でも、この調査は結論付けるにはそれぞれの検体数が足りなすぎるように思うなぁ。

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2020/4/29 COVID-19と家畜の論文を読んでみた⑤


2020/4/19にMicrobes and Infectionへ受理されたCOVID-19と猫についての短報(10.1016/j.micinf.2020.04.006)を読んでみた。以下に要点を抜粋します。


・シミュレーションで、飼い猫が捨てられることにより、COVID-19の感染者が増えるかどうかを調べた。
・捨てられる猫が増えるに連れて、感染者は増加した。
・よって、COVID-19のパンデミック中は飼い猫は捨てるべきではなく、他のペットも放棄することなく家庭内で管理すべきだ。


さて、これまでの家畜への影響の観点を調べたわずかながらの研究からも、徐々に猫が人へCOVID-19を伝播する可能性が取り沙汰されてきた。ここ日本で考えなければならないのが、不特定多数の人が猫と濃厚接触する可能性が高い猫カフェだと僕は思っている。最低限、定期的に猫へのSARS-CoV-2感染の有無を調査する必要があるのではないだろうか。

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2020/4/28 COVID-19と家畜の論文を読んでみた④


2020/4/3のVeterinary Recordに掲載された、香港でのCOVID-19のペットへの感染事例についての続報”Can companion animals become infected with Covid-19?”(10.1136/vr.m1322)を読んでみた。以下に要点を抜粋します。


・1例目のポメラニアンには、抗体形成が認められたと訂正。遺伝的類似性からも、ヒトからイヌに感染したのは間違いなさそう。

・3例目として、ネコで感染例が見つかった。口腔内、鼻腔内、糞のサンプルのRT-PCRで陽性反応。

・動物用の検査会社(アイデックス)ではCOVID-19の感染について数千検体で調査中だが、3/31時点では発見されていない。


日本でも調査しているのかな?

詳しくは、無料で読めるので論文の本文を参照ください。なお、僕は論文の内容を紹介するだけですので、内容の賛否をこの場で議論するつもりはありませんのでご了承下さい。

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2020/4/27 COVID-19と家畜の論文を読んでみた③


3/27にXenotransplantationへ掲載された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の豚への感染についてのコメント”Coronavirus disease 2019 (COVID‐19) outbreak: Could pigs be vectors for human infections?”(10.1111/xen.12591)を読んでみた。以下に抄録を紹介し、感想を少し書きます。


・人のコロナウイルス感染症は主に呼吸器系へ感染するが、豚のコロナウイルス感染症は主に消化器系へ感染する。
・豚の臓器は人への異種移植に用いられているので、豚にSARS-CoV-2が感染するのかは調べる必要がある。
・2002~2003年に人で流行したSARSの原因ウイルスであるSARS-CoVに豚は稀に感染するものの、ウイルスは増幅できなかった。
・2012年より流行したMERSの原因ウイルスであるMERS-CoVの感染実験では、リャマと豚は感染が成立し、ウイルスは増幅していた。
・豚にSARS-CoV-2が感染する可能性はあるものの、SARS-CoVは豚では増幅できなかったこと、COVID-19の感染者と豚が密に接しなければ感染が成立しないこと、さらにこれまでのSARS-CoV-2の遺伝子変異の速度はそこまで早くないことから、増幅はできないだろう。


ここに紹介した論文以降、実験感染をしたScienceに掲載された論文(10.1126/science.abb7015)では豚には感染が成立していなかった。

ところで、これまでCOVID-19と家畜の論文をPubMedのMeshワードから検索していた。

“Animals, domestic”[Mesh] and “COVID-19″[Supplementary concept]
これで検索すると4/27時点で3本しか見つからない。

しかし、Meshワードの付与が掲載されてからかなり遅いことが分かり、この方法では収集スピードがとても遅いことが分かった。なので、タイトルから検索する方が文献はたくさん集められそうだ。

(“SARS‐CoV‐2″[title] or “SARS-coronavirus 2″[title] or “COVID-19″[title]) and (“cats”[title] or “dogs”[title] or “pigs”[title] or “cows”[title] or “cattle”[title] or “horses”[title])
これで検索すると4/27時点で5本が見つかった。しばらくは併用して収集してみよう。

Bibliography

2020/3/23-4/10 “AI and ET of dairy cattle”を公開しました


ただひたすらに乳牛の人工授精 (AI)と胚移植(ET)の腟内での動画を撮影しています。今回もミュラー管融合不全の牛が写っています。JRAの助成金が取れたので、ミュラー管融合不全研究が推進することができるめどがついたのでとても嬉しいです。溜まっていたので少々長いですが、引き続き発情発見のトレーニングとしてご覧ください。

なお、畜主の許可を得て撮影をしています。ミュラー管融合不全についてはこちらをご覧ください。