新人さとちゃんに、分からない菌があると培地を見せられた。
ピンボケで見づらいが、羊血液寒天培地に薄灰色の大きさが不同の小コロニーが生えている。酵素気質培地も同様だ。食塩卵培地には生えていない。コレはアレだな…。
さとちゃんにはグラム染色を指示する。僕は水滴にコロニーを溶かし、先に顕微鏡で覗いた。
一見、大小不同のコクシジウムのオーシストのようなものがたくさん見える。やはりアレだ…。
さらに、さとちゃんがグラム染色したスライドグラスを持ってきた。
グラム染色の陽性および陰性の大型細胞塊が見えた。さらに、パックマンのような、透明の殻もある。
もうお分かりだろう。これは、プロトセカPrototheca zopfi による乳房炎だ。プロトセカは藻の一種とされている。前の診療所の一年の記録では、1528の菌分離された検体のうち、検出は5検体で、わずか0.3%の検出率だ。
薬剤感受性は一部の抗生物質で認めるが、生体では効かない。今回もカナマイシンとテトラオキシサイクリンで広い阻止円を認めたが、乳房炎軟膏をいくら入れても良くならなかったらしい。
11月号の日本獣医師会誌によると、組織学的には乳腺胞、乳管内で増殖し、一部はリンパ節まで浸潤しているようだ。
この患畜も全身症状はないが、乳房には硬結感をわずかに感じた。やはり、乳腺に巣食っているのだろう。
プロトセカの乳房炎に未だ有効な治療法は見つかっていない。当然、患畜の淘汰をお勧めした。
恐ろしや恐ろしや。
カテゴリー: 獣医な話
11/29 数に強い診療所を目指したい
自分と同僚の学術集会での発表が終わり、ひと段落ついた。今回、改めて感じたのは、自分が数に弱いという事であった。データの検定など、いつまでも人に頼ってはいけないと思い、エクセルを用いた統計解析方法を学び直すことにした。
幸い、データは満ち溢れている。本の演習にそって、必要に応じたデータを使って実践的に、勉強するつもりだ。
章に従い、FREQUENCY関数を用いて、第四胃変位の診療回数を分布図に書いてみた。一見、体したことのない図である。だが、手術をしてすぐ快方へ向かう牛が多い一方、10回ほどの診療回数を重ねる牛も少数いる。この差は、右方と左方の違い…という訳でもないのだろう。
そんなことをやっていたら、今日は第四胃左方変位の手術になってしまった。あの病気も、この病気も気軽に口に出してはいけない(笑)。ハリーポッターの、「あのお方」に近いものを感じる。
手術のお礼にと、ワインをいただいた。どうしてか、最近はワインを飲むことが多くなった。こちらは、シャトー勝沼。日本産ワインはあまり飲んだことがないので、ありがたく味わってみたい。
そんな訳で、診療所全体でスキルアップし、「数に強い診療所」を目指せたら素晴らしい。同僚の統計学講座も企画しているので、実に楽しみだ。
11/27 休日は酒屋の副業(本業)してます。
学会発表から開放されてからの始めての休日。実家のお手伝いで広報のためにチラシ配りをしていた。
年末商戦に向け、ホームページも、Facebookpageも公開しているので、ぜひ見ていただきたい。
夜はもう一本のボージョレ・ヴィラージュ・プリムールを飲んだ。こちらは、落ち着いた味わいで、旨味が詰まっており、ボージョレを感じさせない出来栄え!ついつい飲みすぎてしまう。
就職してから、死廃のカルテを見るのが好きだった。担当の獣医の奮闘を垣間見えるし、緊急時の治療法を見る事ができて勉強になるからだ。
最近、雑誌で注目している記事がある。日本獣医師会誌の家畜衛生研修会の事例と、全国食肉衛生検査所協議会病理部会研修会だ。臨床現場で気付かれなかった症例が出ており、非常に勉強になる。実に面白い!
11/25 家畜衛生学会、家畜衛生フォーラム終了!
家畜衛生学会の第75回大会での発表が無事に終了した。緊張した云々は全くなく、「ようやく終わるんだ!」という安堵感しかなかった。
先週末から、ひたすらスライド作りに夜の時間を費やした。夜遅くに帰ってきても、文句を言わずに家事をしてくれた妻。拙いスライドを何度も見てもらい、離れた診療所でも惜しまずに助言してくれ、夜遅くまで付き合ってくれた会社の同僚。本当に感謝である。
すーごい長い時間をかけたが、その集大成はたった15分のためであった。しかし、内容は実に素晴らしいものになったと思う。どうか、見てくださった方々の肥やしになることを願いたい。
ところで、家畜衛生学会と家畜衛生フォーラムを通じて、僕の発表したアルカノバクテリウムは三回も登場していた。
決して、病気の主役にはならないかもしれないが、名脇役にはなれるかもしれない[emoji:v-40]
学会も終わったし、アルカノバクテリウムの論文を仕上げて、学術雑誌に投稿してみよう。せっかくだから、勧められた家畜衛生学会誌にしようかしら?
ワクチンを作っている京都微生物研究所の先生が、自ら事を「ワクチン屋」と称していた。
鳥屋、虫屋はよく聞くが、ワクチン屋もあるのか…
僕は何屋になりたいのかと、ふと考えた。
11/17 子牛のナックル再び
双子の難産の片方が、足に奇形があると畜主に聞いた。
見に行くと、可愛らしいホルスタインの子牛が足をプルプルガクガクいわせながらやっとこさ立っている。例によって、子牛のナックル・腱短縮症だ。よちよち歩いてはナックルになってしまう。
前回、手術した子牛と異なり、その度合いは軽度だった。このぐらいなら、手術はおろか、外固定をしなくも何とかなるかもしれない。と、このまま様子をみることにした。
次の日、別件で行ったので様子を見ると、足は大分改善していた!
たった一日でも大分変わってきた!やはり、このまま様子を見させてもらって正解だった…♪
そうそう、前回に手術した子牛のナックルは11万円で売れたそうだ。その時の市場の平均価格であったので、上出来であろう。やった甲斐がありました☆
今日は11月の第三木曜日。当然、ボージョレ・ヌーボーの解禁日でありました!
早速飲みましたよ、ボージョレ・ビラージュ・プリムール!酸味があって、ジューシーな味わいで、美味しかったなぁ!!!