今日は東京へ表題の研究集会へ出張であった。全国の産業動物獣医師が研究の成果を発表しあう、非常に勉強になる有意義な研究集会だ。産業動物臨床分野に偏っているだけに、そこいらの学会より面白いかもしれない。
2日目の今日は、牛のマイコプラズマ感染症についての基調講演と研究発表の講評と表彰であった。
マイコプラズマ感染症は、静かに広がりを見せ、顕在化しつつある。それに関する総説、乳房炎対策く、肺炎対策の3題構成であった。コレを聞くために今日は来た。
「マイコプラズマは多くの代謝系を欠いており、持っていた物を捨てることで生き残って来た。しかし、数種の毒性因子は残しており、表面抗原を次々と変えている。」
「北海道のバルク乳の1.2%でPCR陽性」
「Biofilmを形成し、環境中でも長期間生存する」
「まずは検査しなければ始まらない!」
「対策は1ヶ月が勝負!」
「発生農場では分娩牛や乳房炎牛の搾乳後はお湯のバックフラッシュでミルカーを洗う」
等、役に立つ話が満載であった。さぁ、この情報をいかに農場へ還元しよう!?
そして、研究発表の表彰では、なんと同僚2名がトップの農林水産大臣賞と奨励賞をダブル受賞した!素晴らしい。
しかし、賞賛・感激の反対側で焦燥感も感じた。僕の努力はまだまだ足りていない。どうにか後に続きたいものである。
落ち着かない僕は、はやる気持ちをランニングにぶつけた。3周、15kmを走れるようになっていた。そろそろハーフに出れるかしら?
さぁ、気分一新して頑張るぞ☆
カテゴリー: 獣医な話
2/23 神経症状の出た子牛
以前に肺炎で治療歴のある生後1月の子牛が、急に立てなくなったと診療依頼があった。当初、濃いミルクを飲ませすぎた挙句の高Na血症を疑い、同僚が診療へ行ったが、どうやら違うようだった。
ミルクも飲むし、便も正常で、顔色も元気そうだ。ただ、立たそうとするが、後躯が全く動かない。
前肢は自由に動かせるのだが、後肢は伸展したまま動かせない。そして、後肢のみにブルブルと激しい振戦が認められた。
点滴等の治療をしても状態は変わらず、原因究明のために家畜保険衛生所に病性鑑定を依頼した。
剖検をすると、第3-4胸椎周囲に膿瘍が認められた。その病変が脊椎を圧迫し、脊柱管内部まで突出し、脊椎を圧迫していた。
なるほど、確かにこの部位の神経障害だと、症状と一致する。もっと頭を使い、神経学的検査を行えば病変の部位を推測できたかもしれなかった。もっとも、病変が分かったところで、神経が相手ではどうしようもないのだが。。。
できる事といったら、肺炎や臍帯炎を防ぐことで予防するしかない。子牛は、これらが原因であちこちで膿瘍を形成することが多い。
2/15 お勉強の神様
全国酪農農業協同組合連合会主催の酪農セミナー2012に参加してきた。両親が子供の世話をしてくれるというし、この機を逃すまいと、耳をダンボにして聞いた。
講師の大場博士は、近年の知見をふんだんに盛り込んで、分娩移行期の栄養管理等について話した。「海外からの技術情報は日本の酪農状況を反映しておらず、自らに合うよううまく調整する必要がある」と述べるなど、非常に謙虚な姿勢で好感を持った。
「低Caを予防するには、まずK含量の低い粗飼料を給与する」
「負のエネルギーバランスを改善するには、乳量を抑えるのではなく、エネルギー摂取量を上げる!」
「デンプン濃度を高めてもアシドーシスにさせないために、発酵速度の異なる穀類を2種類使うのがオススメ」
「夏に乳脂率が下がるのではない。冬に乳脂率が高くなっているのだ」
「今まではチャレンジして乳牛を改良してきた。今度は飼養管理方法をチャレンジしてほしい」
良い言葉をたくさん聞きました。
セミナー後に、湯島天神に寄って、獣医師国家試験組の合格祈願をしてきた。もう一踏ん張り、頑張って全員合格してほしい!
2/3 今日は寒かった
千葉県北西部は、大分内陸へ入り込んでいて、実に寒い。特に、土手際の農家では、風が強く、寒さで手が痛くなる。
外壁を覆っていない牛舎では、ウォーターカップの水も、型通りに凍ってしまっていた。
牛は夜も多少は水を飲むので、こんなことには普通ならない。しかし、この場所にいる牛は、口内炎で口が痛いらしく、水が飲めないでいる。当然、餌もうまく食べれない。第一胃は、水分があまりなく、ガチガチになってしまっている。
口腔内は、糜爛が数ヶ所あった。さらに、うまく口を閉じれないため、ヨダレをダラダラ垂らしていた。
最初、この牛を見た時は、まさか口蹄疫ではないかとドキドキした。しかし、必発初見の発熱もないし、粘膜に水泡はない。もちろん、乳頭や蹄冠も異常はない。隣の牛も平熱で、問題はなかった。恐ろしい感染症ではなさそうだ。
取り敢えず、抗生物質の注射と多量の水を強制飲水させている。しかし、口腔内の痛みは変わらない様子で、変わらず食欲不信が続いてる。
果たして、何が原因なのだろうか?そして、この牛に対して何か妙案はないものであろうか。。。
2/2 転んだら、開放骨折に…
とある和牛の繁殖と肥育をしている農家へ妊娠鑑定をしに行った。農家に着くと、先に到着していた新人さとちゃんがどことなくあわてている。
「ハプニングが起きました。」と彼は言った。
畜主が牛を捕まえようと追っていたら、牛が段差でつまずいて転んだという。パキッという音がしたらしい。なんとか立ったが、肢を全く着かなくなってしまった。
この和牛は元々肢を怪我していて、飛節の内側が膿んでいたらしい。肢を精査してみると、内側より血が出ている。そして、その部位より遠位がブラブラとしており、脱臼か骨折が疑われた。
恐る恐る患部に指をいれると、なんと骨に触れてしまった。骨の断面、おそらく遠位端が剥離してしまったようなギザギザを確認した。左後肢脛骨遠位端の剥離骨折なのであろう。
なんとか三本肢で立つが、回復の見込みはない。残念ながら、急遽、と畜することになった。
こんな時、レントゲンがあれば…と、思う。しかし、子牛の骨折でさえ一苦労なのに、成牛では勝ち目はないであろう。