以前、出張で見学に行った農場は、子牛の部屋が非常に良くできていると感じた。
一頭ずつに部屋を用意し、仕切りに板をして接触を防止していた。風邪や下痢は子牛同士で広がると言われているので、大事な対策である。
牛床もキレイな乾草が敷かれており、お腹を冷やす心配もなさそうである。逆に、濡れている牛床は、お腹を冷やすのと病原体が留まるので下痢の温床となってしまう。
自分も親になると、子牛の環境に目が行くようになってしまう。
カテゴリー: 獣医な話
3/13 ナックルと血便のその後
当ブログでもお伝えしていた、子牛の先天性ナックルのギプス固定を除去した。軽度であったので、治す自信はあったのだが、結果は…!?
素晴らしい!ナックルになることなく自力で起立・歩行可能デス。軽度だと保定だけでも治るなぁ。
また、同じく当ブログでお伝えしていた第四胃潰瘍の牛ですが、病理検査結果が届きました!
あの異常所見は、やはり全てB細胞性の腫瘍でした。家畜保健所の見解は、案の定、牛白血病。全身性腫瘍の浸潤で、第四胃も侵され出血していたようだ。あな恐ろしや。
3/12 蹄の集中特訓
入会してから4・5年目のフォローアップ研修が行われた。蹄の集中講義及び実習であった。
座学で近年の知見を勉強した後、と畜場の肢を使って削蹄実習をした。
まずは、いつものようにダッチメソットで削蹄してみた。
こんなに伸びた蹄を…
いつもぐらいに切りました。
切断してみると、底面が薄く、蹄を切りすぎていました。その後、何度も削蹄し、その度に切り過ぎを指摘されてしまった。
自分の感覚を少し修正するよい機会になった。蹄は一本ずつ個性がある。それを一本毎に読み取らなければならない。
仕事に復帰したら、早速、蹄病治療があった。
畜主も削蹄してみたが、病変が分からなかったらしい。
外蹄が蹄底潰瘍になりかけていた。薄くヒールレスにして終了。
写真をうまく撮る練習が必要だなー。
3/2 第四胃潰瘍と腫瘍の関係
とある老齢牛が、急に食欲不振に陥った。ほとんど食欲はなくなり、黒色便をしていた。
目や陰部の粘膜面は白くなり、貧血に陥っていた。
血液検査をすると、赤血球は25万個、ヘマトクリット値16%であり、さらにTPも減少しており、血液の漏出が疑われた。白血球は1.2万個で、やや異形なリンパ球が多数認められた。LDHは8000を超えていた。
この牛は、第四胃潰瘍と診断をつけ治療を開始したが、初診から3日目で残念ながら死亡した。
原因究明のため、剖検をさせていただいた。
第四胃に付着する大網には腫瘍と思われる塊が少数認められた。
第四胃の内容は、黒色の胃液で満たされていた。
第四胃の粘膜面は、非常に脆弱化しており、全体的に充出血していた。さらに、ごつごつした塊が全体に侵食しており、割面は腫瘍塊と思われた。
この牛は、全身性腫瘍が第四胃を侵食した結果、粘膜から出血していたのであろう。
成書にも、第四胃潰瘍のタイプの一つとして、腫瘍の侵食を挙げている。現在、この腫瘍塊を病性鑑定してもらっているが、まぁアレなんだろうな…
2/28 先天性の腱異常
生まれつき、前肢の浅肢屈筋の腱が短縮化している牛に度々遭遇する。
短縮は、軽度で自力歩行できるようなら、自然に治る。すぐナックル化するものの、自力で起立できるようなら、ギブスで固定してリハビリすれば治る。重度で、自力の起立に至らない程だと、腱切除を行わないと治らないかもしれない。
今日、診療依頼のあった子牛は、一瞬は起立できるが、すぐに球節で負重してしまう。まずは、ギブス固定を試みた。試供品のカワイイ包帯を使ったら、カワイイ肢になってしまった(笑)。外す頃には、何とか治っていますように!!
さらに稀ではあるが、この腱が伸びて生まれてくる牛もいる。いわゆる、繋ぎの弱い牛である。
外科的に腱を切除して関節を伸ばすことはできるが、縮めることは難しい。この牛は治らないであろうと思っていたが、自然に肢は治癒して売られて行った。
生き物の世界は予測が外れる事も多い。
夕方は、他の先生のヘルプでお産に向かった。側頭位の胎子で、首の根元より先が全く触れなかった。
帝王切開が脳裏をよぎる中、格闘すること1時間。人工粘液をたくさん流し込み、首にチェーンを回し、耳に触れ、目に触れ、ようやく口に触ることができるようになった。死産であったが、子牛を出し終えた頃には、僕の握力はほとんどなくなっていた。
久し振りに全身汗だくで、ハッスル!ハッスル!