F1子牛における開放性の感染性関節炎に対して関節切開術を行い、結果的に治癒した。ぜひ参考にしていただき、恐れずに手術をチャレンジしていただきたい。
左前肢の手根関節が腫脹し、すでに膿汁を漏出していた。傷口から指を挿入すると、関節に達していた。この時点で、即関節切開術を選択した。
大学の先生方からの助言から、患部への縦切開を選択。水道水を延々と流しながら手術を行った。
明らかな異常部位をメスや鋏で切除していくが、今回もだんだんと正常と異常の境が分からなくなってきた。とにかく、全ての組織をできる限り切除した。関節腔内も切開し、屈曲させて内部を徹底的に洗浄した。奥の方にフィブリン塊等が析出しており、鉗子を使いながら完全に除去した。
関節腔は縫合できるものは無いため、そのままにして皮膚のみを縫合した。欠損した皮膚の部位を広く切りすぎたため、縦切開でも一部皮膚が寄らず、そのままキャストで固定した。7日間抗生物質を継続しつつ、このまま約10日様子を見た。
キャストを除去すると、上下の縫合は融合していたが、皮膚が寄らなかった部位は肉芽が形成されていた。抜歯して、肉芽の部分は洗浄し、キトサン製剤を塗布し、再度キャスト固定した。さらに約10日様子を見ることにした。
キャストを除去すると、肉芽はさらに盛り上がり不潔な感じは全くない。負重も全く問題ないため、患部を洗浄し、キトサン製剤を塗布し、綿花包帯のみを行った。さらに約10日様子を見ることにした。
包帯を除去すると、皮膚の再形成がさらに進んでいた。負重も問題ないため、このまま様子を見ることにした。患部を屈曲させると、可動域は狭く折り曲げることはできないが、治癒したと言って良いレベルであろう。
この関節切開術は、関節固定術と共に外科の教科書に載ってはいるが、日本での症例報告は少なかった。大学の先生が推していたのでやってみているが、これで2戦2勝。こんなにひどい関節炎が治るなんて、ビックリ仰天。今年一番の驚き技術であった。ただ、印象としては、関節切開術というよりは関節内クリーニングという感じ。