2018/12/20 引き続きウシの精子に対する尿の影響を調べている。ヒトの精子に対する尿の影響を調べた論文(10.1016/S0015-0282(16)57990-4)を読んでみた。
尿がヒトの精子機能に及ぼす影響を調べ、その悪影響の理由を解明すること
0%, 40%, 80%, 100%の尿に精子を混ぜ、運動性、粘液での移動性、透明帯の貫通性を評価した。 また、pHと浸透圧を尿と同等へ調整した培地にも精子を混ぜ、精子機能を同様に評価した。
Sperm were exposed to various concentrations of pooled urine in Ham’s F-IO Medium supplemented with 3.5 g% bovine serum albumin (GIBCO, Grand Island, NY) and sperm exposed to Ham’s F-IO Medium with pH and osmolality adjusted to mimic that of the urine (pH 5.4; 520 mOsm).
40%以上の尿に暴露された場合、精子の機能は全ての評価項目で低下した。一方、pHと浸透圧を調整した培地では有意な変化は認められなかった。
All sperm variables studied were significantly decreased when the sperm were exposed to 2:40% urine. Potential of hydrogen- and osmolality-adjusted Ham’s F-lO did not significantly affect the sperm function.
ヒトにおける尿は精子機能に悪影響をもたらしており、pHや浸透圧以外の尿の要因が関与している可能性がある。
Urine is deleterious to sperm function and may involve other biochemical factors that are unrelated to pH and osmolality of urine.
尿に入っている何らかの成分が精子の機能に害を及ぼしている可能性が高いが、それはまだ分からないって話か。ヒトの尿は酸性なのかって感心していたら、哺乳類は食べ物によって差があるらしい。よって、草食動物ではアルカリ性だ。
先日読んだ論文(10.1095/biolreprod67.6.1811)には各種の動物の比較も出ていて(図3)、浸透圧はかなり広い範囲で運動性が認められている。もしかすると、人は雑食なので、尿などの成分も変化しやすく、広い浸透圧の範囲において精子の運動性がみられるように適応してきたのかもしれない。何にせよ、今回読んだ論文で520 mOsmくらいに調整した培地ではヒトの精子機能に影響が出なかったのは、一貫性のある知見のようだ。