ヒトの尿では精子にどのくらい毒性があるのかと思い、論文を調べていたら法医学の学術誌に行き着いた。健康な男性における射精後の尿中精子の生存性を調べた論文(10.1016/j.forsciint.2009.10.002)を読んでみた。
尿中に精子が混入することがあるのは人でも動物でも認められている(射精後の尿や逆行性射精)。しかし、射精後の尿中で精子がどのくらいの長さ生存しているかは知られていない。
射精後の排尿から生存精子がどのくらいまで分離できるかを調べること。
健康な若い男性10名の射精前の尿、射精後の尿、精子を採取した。射精後の排尿までの時間は30分から11時間後までの幅があった。尿中の精子は生存し運動性があるかを調べた。
全員、射精前尿中に精子は認められなかったが、射精後尿中に精子が認められた。最長で4.5時間後の排尿まで生存精子が認められた(表1)。
The results showed that none of the 10 participants had sperm in their urine samples prior to ejaculation. The average sperm concentration was 50.1 million/ml. After a time span of 30 min 59.5% of the first fractions of post-ejaculatory urine samples were sperm positive, after 2 and 4 h still 70%, and after 5 h sperm were no longer detected. The last motile spermatozoa could be found after 4.5 h.
尿道に残された精子は多くの男性で初回排尿で洗い流されるようだが、射精後5時間後以降も生存精子が見られるかはさらなる調査が必要。
緒言に実際の法医学上問題となった事件が書かれており、非常に生々しい研究の動機で衝撃的だった。
それはともかく、射精後の尿中で、さらに採取から2時間以内の検査なのに精子に活力があったのは衝撃的。ずっと尿に精子がいたのではなく、尿道に残された精子が尿と一緒に排出されているのであろう。
尿の精子への影響は致死的だと報告されているらしい(10.1016/S0015-0282(16)57990-4)ので、そちらの論文も読む必要があるな。