2018/12/2 胎児の中手骨・中足骨の太さがホルスタイン種乳用牛の難産を予測する指標になるかを検討した論文を読んでみた


胎児の中手骨・中足骨の太さがホルスタイン種乳用牛の難産を予測する指標になるかを検討した論文(10.3168/jds.2018-14658)を読んでみた。

  • 【背景】
    未経産牛の約5割、経産牛の約3割が難産だったという報告がある。また、難産の一般的な原因は在胎期間と、胎児と骨盤腔の不均衡である。そして、胎児と骨盤腔の不均衡の2大要因は子牛の体重と母牛の骨盤腔の大きさである。
  • 【目的】
    ホルスタイン種乳用牛の妊娠末期における胎児の中手骨・中足骨の太さが出生時体重と難産を予測できるかを検討する
  • 【材料と方法】
    妊娠期間265-282日の母牛128頭に経直腸超音波検査を実施し、胎児の中手骨・中足骨の太さを測定(図1, 2)。

    分娩のスコア化は以下に従った。スコア1(自然分娩)は無介助、または、一人でのわずかな介助分娩。スコア2(lightな難産)は足胞の出現から2時間経過、または、一人での機械を使用しない中程度の牽引。スコア3(mildな難産)は2人での機械を使用しないかなりの牽引。スコア4(severeな難産)は3人でのかなりの牽引、または機械を使用した牽引。スコア5は帝王切開、切胎。

    子牛の体重は出生直後に測定した。

    母牛と子牛の足の太さを考慮するために、MCTI(母牛体重kg / 中手骨・中足骨の厚さcm)という新概念を用いて検討した。

  • 【結果】
    ①93.3% (104/128)の子牛を測定できた。104頭のうち、単子は93.3%、双子は6.7%であった。単子の分娩の44.3%が難産(スコア2以上)だった。単子の分娩の92%が頭位であった。

    ②難産発生を目的変数としたロジスティック回帰分析では、MCTIを説明変数としたモデルが最適であった。そのモデルにおけるオッズ比は2.07 (CI=0.002~11.104)であった(表1)。

    ③中手骨・中足骨の太さと出生時体重には正の相関が認められた(r = 0.43, P < 0.001, 図3)。

  • 【結論】
    MCTIという概念は、調査項目の中では難産発生の予測に最も適していたものの、すべての難産を予測するのは困難。難産率は「難産の定義」と分娩の管理方法により大きく異なるため、他の牛群で同様の難産スコアをした上で、MCTIの有用性を再検討する必要がある。
  • 【感想】
    分娩前に足を触れない場合はたまにあるので、その時は評価できない。けど、ちゃんとエコーで測定できれば、子牛の過大の推定はできるって話か。難しいのは、「難産」を決めるのは子牛の腕の太さや体重だけではないってこと。確かに、「サイズが原因の難産」は頭部および両前肢の大きさや胴回りと骨盤腔の広さの問題なんだろうから。
  • Bibliography

    「2018/12/2 胎児の中手骨・中足骨の太さがホルスタイン種乳用牛の難産を予測する指標になるかを検討した論文を読んでみた」への2件のフィードバック

    1. お疲れさまです
      いつもながら忙しいなか論文を読んでいてすごいっす?

      この内容現役の時にすごいやってみたかったんだよね‼️
      手を入れた瞬間にいつも聞かれるから‼️

      人の手でなく、超音波ってのが大事だよね❗️中手骨をつかんで『でかいな』と思って、でてきらそうでもないのが多かったので、自分の手は信用してません?

      紹介してくれてどうもありがとうございます?

      1. こんにちは!IVFのETが普及してから分娩前後の胎児についての問い合わせが増えたような。そして、触診だけでは結局よく分からないという獣医師あるあるですよね。

        超音波では微細な差が出るので診断しやすくなるって事ですが、母体の骨盤腔のサイズも測定しないと「難産」の確証はできないって結論です。うちの所長に言わせると、子牛の大小は骨の太さより、球節から蹄尖までの長さの方が分かりやすいと言ってますねぇ。まだまだ検討の余地ありそうです。

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