乳牛の子宮頚管と腟の粘膜におけるインターフェロンτ誘導遺伝子によって妊娠診断ができるかを検討した論文(10.3168/jds.2017-14251)を読んでみた。
【背景】インターフェロンτは胚により産生され、着床に必須である。妊娠17-19日が最大値に達する。インターフェロンτに誘導される遺伝子としてISG(ISG15, MX1, MX2)が知られており、血中白血球における発現をみることで早期の妊娠診断が可能になると期待されている。しかし、白血球でのISGのmRNA発現には差異が大きく、信頼性に欠けている。
【目的】妊娠または非妊娠搾乳乳牛の子宮頚管と腟の粘膜におけるインターフェロンτ誘導遺伝子(ISG15, MX1, MX2)発現をみること
【材料と方法】人工授精17または18日後のホルスタイン種搾乳牛の外子宮口(子宮頚管)と腟深部から粘膜サンプルを採取し、定量的PCRにてISG15, MX1, MX2のmRNA発現を解析(βアクチンを参照値とした)。同時に血液も採取し、白血球におけるmRNA発現量も解析した。AI後30-60日で妊娠鑑定し、受胎群と不受胎群で分けて発現量を比較した。
【結果】不受胎群と比較した受胎群のISG15のmRNA発現量は、子宮頚管で87倍、腟で17倍だったのに対し、白血球では5倍だった。同様に、不受胎群と比較した受胎群のMX1のmRNA発現量は子宮頚管で17倍、腟で8倍、そしてMX2のmRNA発現量は子宮頚管で20倍、腟で8倍だった。
【考察】インターフェロンτの影響は思っているより広く作用している。ただこの作用が、インターフェロンτが子宮から直接的に子宮頚管や腟へ流出しているのか、血液循環を介しているのかは不明。
【感想】発情17または18日後における腟内サンプルで、白血球よりハッキリとした妊娠診断が可能となるってことだな。畜主でも採材可能なのが良い点なんだろうな。でも、インターフェロンτに反応する遺伝子を見ているので、感度と特異度はどうなのだろうか?ってのが気になるところ。インターフェロンτに全身が反応していても、着床に至らないものもいるだろうからなぁ。
妊娠のマイナス診断としては有用そうだな。やるとしたら、発情17または18日後にマイナス診断して、即PG投与っていう姿かな?
Bibliography
No tags for this post.