F1子牛の臍が突出していると診療依頼があった。臍ヘルニアではなく、患部より排膿していたため、重度の臍帯炎と診断し手術を提案した。抗生物質を数日投与した後に、傍正中切開による摘出手術に踏み切った。超音波画像診断装置で患部を事前に詮索すると、腹腔にまで炎症は波及しているように見えた。
この病変は肝炎索へとつながっていたので、臍静脈炎だと診断できた。念のため肝炎索を結紮した後、病変を周囲の腹膜ごと摘出した。写真1にある摘出物の中間にあるヒダが腹膜の部位であったため、腹腔内にまで病変は存在していたことが分かる。
写真2のように、臍帯がつながっていた部位は数日間の抗生物質の治療のおかげで、排膿は認められず皮膚も癒合している。
しかし、摘出物に割面をいれてみると、腹腔内に存在していた患部に壊死した感染部位が未だに存在していたのが分かった(写真3)。抗生物質での治療だとこれらを治すには時間がかかっただろうし、摘出手術をして正解だったと確信した。経験者がすでに論文で記述しているように、傍正中切開の方が傷は大きくなってしまうが病変の状態の把握がしやすかった。正中切開では今回の病変を腹腔内に取り残してしまう恐れもあったであろう。、