2016/8/7 一人でナックルを整復


久しぶりにナックルの矯正を依頼された。牛を見に行くと両後肢がナックルになっていたが、起立はスムーズなのでBOS副木による整復を試みた。

写真1image

左後肢が最初に、次に右後肢がナックルとなったそうだ(写真1)。右後肢の方が若干軽度。

写真2image

下腿筋の損傷を超音波画像診断装置で検査するため剃毛を行った(写真2)。筋損傷は認められず、神経学的検査と併せて、総腓骨神経麻痺と診断した。

写真3image

より強固な整復を行うために、写真3のように副蹄をできるだけ小さくする。

写真4image

ストッキネットによる下巻き(写真4)は褥創防止や血行の確保にとても重要だ。

写真5image

BOS副木でナックルを矯正する際、位置を決めた後に結束バンドで仮止めを行うと便利。最終的にはスコッチキャストで固定した(写真5)。

写真6image

副木の角は乳房や肢を傷つける恐れがあるため、下巻きのストッキネットを折り返して包帯をしている(写真6)。

写真7image

罹患牛は広い場所で管理することも大切だ(写真7)。整復を行わなくても、放牧場で自由に運動させるだけで治ってしまう症例も散見する。

僕たちの診療所はBOS副木での矯正方法に落ち着いたが、北海道の診療所ではナックルケアを使っている診療所もあると聞いた。いつか僕たちも使って見て、整復のしやすさを比べてみたいなぁ。

乳牛の後肢球節の突出, いわゆるナックルに対する矯正法

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「2016/8/7 一人でナックルを整復」への4件のフィードバック

  1. おー、ものすごく勉強になる写真です。
    自分の知る限り、先生の方が道の獣医より上手に整復されている印象を受けます。
    ナックルケアも使っていますがローリングによるナックルケア自体のずれと、点で固定することが原因と思われる疼痛などでうまくいかないことが多いと感じています。

    教えてください
    ①副蹄は何で削っていますか?:結構疎かにしてそのまま巻いて失敗していることが多いです。。。
    ②ストッキネットは一枚ですか?:固定の為には薄いのが一番だと思うのですがおそらくこちらの獣医はかなり厚く巻いてしまっています。これも失敗の原因だと感じています。。。
    ③スコッチキャストはこの症例では何本使用でしょうか?

    質問ばかりですみません。しかし悲しいことにこちらではナックルはかなり放置されている状況です。特に酪農専業地帯である道東方面は苦手としている獣医が多い気がします(本人がそう感じているかは別ですが)。南部の方の先生はかなり熱心でテーピングなど本当に勉強されています。

    1. >ankoさん
      毎度返信が遅くてすみません。簡単に答えますね。
      1. 副蹄は剪鉗と削蹄用ヤスリでやることが多いです。グラインダーも使うことがありますが、鎮静下でも肢が動くことも多く、危ない思いをすることがあります。出血させてしまうことも度々ありますが、より強固に副木を装着するためにできる限り短くしています。
      2. ストッキネットは一枚で、その上に伸縮包帯を巻いています。厚すぎると副木の間に隙間ができて整復が不十分になりますし、何もつけないと圧迫による血流障害や神経障害が起きます。バランスが難しいですが、僕たちは薄いやり方でうまく行っています。
      3. サイズは手元にないので分かりませんが、3本使っています。装着後1-2日は、肢が重くなるのが嫌なのか、整復されて痛いのか、肢を後方に蹴る仕草が頻繁に見られます。蹴られないよう注意が必要ですね。肢が重くなっている分、蹴りの威力も増しています。

      ナックルケアーは釧路のNOSAIの先生から情報をもらいました。その方の診療所ではナックル整復が普及していると言っていたので、やはり地域差がありますねー。

      更科先生はまだ現役の獣医師なのですが。論文で名前をよく拝見するので、いつかお会いしてみたい獣医師の一人です。

  2. 何度もすみません。南部の先生というのはこの論文の著者であられる更科先生のことです。
    一度講習会で教えていただきましたが本当に美しいテーピングをされていました。あれくらい技量があればナックルケアも上手に使えるのかもしれません;;

  3. ありがとうございました。
    チャンスがあればトライしてみます!

    更科先生はしゃくなげ会で北海道の会長をされているので、セミナー等でもしかしたらお会いできるかもしれません。

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