- Creatine kinase (CK)は筋肉に特異的な酵素。骨格筋、心筋、脳で高い活性を有する。
- 血球中にも微量にCKが有り、血球からの成分が測定に影響するため、溶血時はCK値が上昇する可能性がある。
- CKの血漿中の半減期は短く、牛では4時間以内。損傷から時間が経っていると、値は著しく低下する。また、採取から検査までも時間が経っていると、値は低下する。CKの高値が続く場合は、引き続いて筋損傷が起こっている可能性がある。
- CK活性は常温、低温では不安定。万一、12時間を越してから検査するのであれば冷凍保存(-20℃)する。
- 血清中のLactate dehydrogenase (LDH)は筋肉、肝臓、血球が主な供給源。
- LDHにはアイソザイムがLDH1 ~ LDH5まであり、牛ではLDH1が心筋、腎臓、肝臓由来、そしてLDH5が骨格筋と血球由来のアイソザイム。
- 血球はLDH活性が高いので、見えるほどの溶血した血清ではLDH活性が高くなるかもしれない。
- LDHは組織特異性が欠けており、ちょっとの溶血でも高い活性を示すので、CKやASTよりは有用ではない。
- LDHは冷凍では不安定だが、冷蔵(4℃)では安定。
- 血清中LDHの半減期は5日以内で、CKやALTよりは長い。
- 筋損傷を評価するならCKが最もsensitive!
- CK活性は筋損傷後4-6時間以内に上昇し、6-12時間で最大に達する。
- もし損傷が続かなかったら、血清中CKは24-48時間以内に基準値に戻ってしまう。
- 血清中CK値が10000IU/L以上、もしくは2000IU/Lが続く場合にのみ、筋損傷の程度を評価してよい。
- ASTはCKやLDHよりゆっくりと上昇し、上がったAST活性は筋損傷から数日続く。
- LDH活性は48-72時間での最大に達する。LDHの半減期は長いので、LDH活性はCKやASTよりゆっくりと基準値に戻る。
→つまり、検体はすぐに測定する。溶血時は解釈に注意する。推定する筋損傷からの時間が短い時はCKを、長い時はLDHやASTを評価する。と、心に留めておこう。
さて、それでこの症例をどう考えるか。
削蹄師が作業中にすっころんだ牛。起立して、削蹄し、後肢がフラフラになりながら牛舎に戻るも、翌日から起立不能になった。
削蹄終了から採血までが16-20時間、採血から測定までが10-14時間くらいだろう。溶血はなし。
CKは200000UI/L以上、LDHは50000UI/L以上。LDH5が特に上昇している。
外見では分からないが、やはり重度の筋損傷なんだろうなぁ。