生後約3週間でコクシジウム症を疑う血便を排した後、全く糞が出なくなったF1子牛がいた。約20cmもの大きさの偽膜を3回は排出し、糞が出るようにはなったが、残念ながら衰弱して斃死してしまった。
今回に確認した偽膜は形も大きさもまるでバナナのようであった。
切開すると、中心に黒色の糞塊があり、それを包むように2層の被膜があるように見えた。
だが、そもそも偽膜とは何だろうか?
「炎症性刺激により血管透過性が亢進し、血漿中のfibrinogenが漏出して繊維素fibrinが析出する。炎症性刺激が激しい場合にに生じ、中毒、伝染病などで多く認められる。漿膜や粘膜の表面での繊維素性炎は、脱落した被覆細胞と滲出した繊維素が混じりあって組織表面をおおい、偽膜pseudomembraneを形成するので、偽膜性炎pseudomembranous inflamationとも呼ばれる」
(動物病理学総論 第2版, 日本獣医病理学会編集, 2001, p166より)
「偽膜は、繊維素壊死性腸炎に認められる。粘膜の壊死と粘膜の表面から深層に繊維素の滲出が起きた結果、壊死組織と繊維素とが痂皮を形成する。痂皮下の白血球が組織を融解し、痂皮の剥離脱落が起きる。その結果、粘膜は欠損し、潰瘍を形成する。」
(コンパクト 家畜病理学各論, 桐生啓治 町田登 著, 1999, p51-52より一部抜粋)
原因の伝染病には豚コレラ、BVD-MD、悪性カタル熱、サルモネラ症等と書かれている。