急な食欲不振の牛がいた。初診時にタール状血便で、歩様滄浪、貧血を呈していた。
翌日には起立不能となり、腹囲膨満となった。そして、第6病日、この牛は斃死した。
出血性腸症候群?第四胃右方変位?それとも腸捻転?原因を究明すべく、剖検を行なった。
腹膜を開けると、巨大な第四胃が出てきた。まさか第四胃右方変位であったのだろうか?中を切開した。
内容は大量の食塊が詰まっていたが、出血性病変は見当たらない。他に病変があると思われた。
さらに下部消化管を探索すると、病変が見つかった。空回腸の一部が癒着し、腸の一部が閉塞していた。
癒着を剥がすと、閉塞部より後方で腸管が壊死していた。ここで内容物が詰まっていたのだ。
危惧していた出血性腸症候群ではなかったが、腸の捻れから癒着が始まったのであろう。
原因は分かった。さて、生前にどのように診断できたろうか?診断をしても、果たして、手術の判断ができただろうか…。考えさせられる剖検であった。