以前に肺炎で治療歴のある生後1月の子牛が、急に立てなくなったと診療依頼があった。当初、濃いミルクを飲ませすぎた挙句の高Na血症を疑い、同僚が診療へ行ったが、どうやら違うようだった。
ミルクも飲むし、便も正常で、顔色も元気そうだ。ただ、立たそうとするが、後躯が全く動かない。
前肢は自由に動かせるのだが、後肢は伸展したまま動かせない。そして、後肢のみにブルブルと激しい振戦が認められた。
点滴等の治療をしても状態は変わらず、原因究明のために家畜保険衛生所に病性鑑定を依頼した。
剖検をすると、第3-4胸椎周囲に膿瘍が認められた。その病変が脊椎を圧迫し、脊柱管内部まで突出し、脊椎を圧迫していた。
なるほど、確かにこの部位の神経障害だと、症状と一致する。もっと頭を使い、神経学的検査を行えば病変の部位を推測できたかもしれなかった。もっとも、病変が分かったところで、神経が相手ではどうしようもないのだが。。。
できる事といったら、肺炎や臍帯炎を防ぐことで予防するしかない。子牛は、これらが原因であちこちで膿瘍を形成することが多い。