12/2 プロトセカの乳房炎


新人さとちゃんに、分からない菌があると培地を見せられた。

ピンボケで見づらいが、羊血液寒天培地に薄灰色の大きさが不同の小コロニーが生えている。酵素気質培地も同様だ。食塩卵培地には生えていない。コレはアレだな…。
さとちゃんにはグラム染色を指示する。僕は水滴にコロニーを溶かし、先に顕微鏡で覗いた。

一見、大小不同のコクシジウムのオーシストのようなものがたくさん見える。やはりアレだ…。
さらに、さとちゃんがグラム染色したスライドグラスを持ってきた。

グラム染色の陽性および陰性の大型細胞塊が見えた。さらに、パックマンのような、透明の殻もある。
もうお分かりだろう。これは、プロトセカPrototheca zopfi による乳房炎だ。プロトセカは藻の一種とされている。前の診療所の一年の記録では、1528の菌分離された検体のうち、検出は5検体で、わずか0.3%の検出率だ。
薬剤感受性は一部の抗生物質で認めるが、生体では効かない。今回もカナマイシンとテトラオキシサイクリンで広い阻止円を認めたが、乳房炎軟膏をいくら入れても良くならなかったらしい。

11月号の日本獣医師会誌によると、組織学的には乳腺胞、乳管内で増殖し、一部はリンパ節まで浸潤しているようだ。
この患畜も全身症状はないが、乳房には硬結感をわずかに感じた。やはり、乳腺に巣食っているのだろう。
プロトセカの乳房炎に未だ有効な治療法は見つかっていない。当然、患畜の淘汰をお勧めした。
恐ろしや恐ろしや。

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