大雪が降るのではと警戒されていた金曜日、産前の経産牛が起立難渋と休診依頼があった。
昨日までは元気だったが、今朝から少し食欲が落ちて起立がのっそりとのこと。見た目にはそんなには重篤そうでなく、乳房の張りも悪くない。畜主曰く、「もうお産に入っているから」と、カルシウム剤だけ打ってくれれば良いという雰囲気。
確かに体は少し冷たいが、尾の力は普通にありそう。何かおかしい。念のためと、産道の開き具合を診ようと手を入れると、、、捻れている。
立たせてもやはり捻れている。子宮捻転だ。反時計回りに180度だろう。なんとか腕は入るが胎児には触れられない。用手による整復は無理そうだ。
仕方ないので、援軍を呼んだ。牛を転がす他ない。
畜主による重機を用意してもらい、まずは後肢吊り上げ方を試みる。母牛の尻を持ち上げ、子宮の自重で直す方法だがビクともしない。そのまま、母牛回転法を試みる。反時計回りに回転させると、少し捻転がゆるまった。だが、まだ膣部が捻れているようだ。それ以上は変わらないので、牛をたたせてみた。今度は捻転が時計回りになっていた。どうしようもない。
この時点で、整復は不可能と判断し、帝王切開をすることとした。ふと見上げると、ボタン雪がかなりの勢いで降っていた。
雪降る中の帝王切開。指先がどんどん冷えていくのが恐ろしい。2人で鼻水をダラダラ垂らしながらの手術となった。
雪中の手術というものも、今後の記憶に残ることだろう。起立難が帝王切開に化けたのだ。本当に恐ろしい仕事だと思う。