今日、子宮洗浄を実施した牛の回収液はすごく白濁していた。(写真左)
片方の子宮に対し、500mlの生理食塩水で洗い続けてもいまだに汚れていたので、1Lまで行った。さずかにここまでやれば回収液は綺麗になった。(写真右)
子宮にはほどんど収縮、弾力はなく、内部感も認めなかった。潜在性子宮内膜炎だったのでしょう。
子宮洗浄すると、わりあい発情がハッキリくるようになるし、受胎牛が増えている気がするので僕は好きです。ちと面倒くさいけど。。。
カテゴリー: 獣医な話
4/25 Arcanobacterium pyogenesその2
Arcanobacterium pyogenesは、特徴的なコロニーを形成するので、慣れれば簡単に識別できるようになる。
写真は血液寒天培地とクロモアガー酵素基質培地で48時間好気培養したもの。微小なコロニーが一面にべったり生えることも多く、見慣れていないと「菌が生えていない」と勘違いしてしまう。
そんな時は、蛍光灯などに培地をかざして見ると、明瞭なβ溶血をしているのが分かる。
また、発育の悪い菌も多く、菌種が判断つかないような小さな菌は必ず48時間培養した方が良い。そうすると、β溶血もはっきり見えるようになり、Arcanobacterium pyogenesと分かるかもしれない。
クロモアガー酵素基質培地上には明瞭なコロニーを形成しない。が、うすぼんやりと紫色の何かが見えることもよくある。が、100%でもないし、あまり当てにはしてはいけないと僕は思っている。
もちろん、細菌学の基礎はグラム染色なので、染めることも重要だ。グラム陽性の桿菌がたくさん見えるはずだ。
Arcanobacterium pyogenesは、まずは培地上に生えていることを見逃さないことがとても重要なのだ。
4/18 Arcanobacterium pyogenesその1
現在、Arcanobacterium pyogenesに起因する乳房炎について調べを進めていて、手元のデータを整理中です。
そこで、今までにどんな文献が出ているのかと調べてみたのですが、あまり論文検索に引っかかりません。日本語の文献に至っては、全くないと言って良い。産業動物臨床獣医なら、「アルカノの乳房炎はどんなものか」を経験的にみんな知っているが、それを客観的に見たデータが論文として出ていないのだ。
なので、最近の海外の論文を少しずつ読んでいる。そこから自分が学んだこと、気づいたことをメモメモ!
Arcanobacterium pyogenes mastitis in a 18-month-old heifer.
Quinn AK, Vermunt JJ, Twiss DP.
N Z Vet J. 2002 Aug;50(4):167-8.
・アルカノ乳房炎では、原因菌として他の好気性・嫌気性菌が検出されることが90%近くある。
・これらの菌の共同作業の結果、乳房のダメージは重篤化する。特に、Peprostreptococcus indolicus。
・しかし、なぜ乾乳期の乳房で感受性が強いのか等、分かっていないことも多い。
確かに、他の菌が同時に検出されることは多いけど、そこまでではないような…。でも、この観点からも見てみようと思う。
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散歩中に見つけたシマヘビらしいもの。どんなジャンルでも、興味や面白みを見いだして、調べて見ることは大変勉強になる。
最近は鳥以外の生き物を調べていない。。。と、反省している。
4/6 牛乳の甘み
牛乳の甘みを担っているのは乳糖。乳成分の指標はいくつかあるが、乳糖率もその一つ。しかし、僕はその推奨値を知らなかった。が、簡単に出せることが分かった。
無視固形分率=乳蛋白率+乳糖率+無機物率
無視固形分率は8.5%以上、乳蛋白率は3.0%以上、乳脂肪率は3.5%以上が推奨されている。そして、無機物率はカルシウムやビタミン等でほぼ1%と相場は決まっているらしい。
よって、引き算で乳糖率は4.4%ほどがよいようなのだ。知らなかった!!!
3/15 リンパが腫れた
慢性の高熱に陥っている牛の後乳房基部に、両側性の腫脹が認められた。外見上は、それはあたかも懐かしい甘食のよう。。。
他の先生に聞くと、それはリンパ節だという。調べて見ると、確かに後乳房基部にリンパ節がある。その名は浅鼠径リンパ節superficial inguial lnn.という。雌では乳房リンパ節mammary lnn.ともいわれる。家畜比較解剖図説によると、「結核や乳房炎の診断に利用される。腫れると両側で皮下に盛り上がって認められる」とあり、臨床上重要だと書かれている。
慢性の乳房炎で腫れることもあるようだが、個人的にはあまり当てにならないように思う。それよりも、白血病の牛でこのリンパ節が異常に腫脹しているのをたまに見ることがあり、診断の参考になる。
このリンパ節は腸骨大腿リンパ節iliofemoral lnn.(深鼠径リンパ節deep inguial lnn)、内側腸骨リンパ節medial lnn.へとつながっている。さらに乳ビ槽Cisterna chyliから胸管Thoracic ductを通り、前大静脈に注ぐ。当たり前のことだが、リンパの道は血管に通ずるのだ。
よって、白血病の牛ではリンパ管を伝って全身性に腫脹が広がり、あっちゃこっちゃのリンパ節が腫れることになる。なお、よく直腸検査で触診しているリンパ節は腹壁リンパ節epigastric ln.で、同じく内側腸骨リンパ節に通じている。
久しぶりに勉強しました。Bovine Anatomyの英語版を購入したのですが、図が美しくなかなか良い本ですね!